【静かな世界】


作:木洩れ日の錬金術師

 

 

 

 


 ドオオオン………
宇宙に爆音が轟き、一年半に渡るコーディネーターとナチュラルの戦争は、一先ず幕を閉じた。
カガリの操るストライクルージュでクサナギに戻って来たアスランとキラ、そしてカガリは、労いと無事を喜ぶ声に出迎えられる。
ブリッジのモニターからはエターナル・アークエンジェルの面々の顔も見えた。


「それでは一旦、休息を取る事に致しましょうか」
モニター越しに聞こえるラクスの声に皆、頷く。
簡単な報告や状況確認を終えた後、必要最低限のクルーを残し、皆は思い思いに艦内へと散って行った。
キラはエターナルに寄ってから、アークエンジェルにある自室へと戻るらしい。

アスランがカガリを見ると、キサカと何か話し込んでいた。どうやらまだやる事があるようだ。
視線に気付いたカガリが「お前も早く休んでこい」と言っている。
「カガリもな」と言って、アスランは仮眠室へと向かった。

 


…それから暫く経った頃、アスランはクサナギの艦内に佇んでいた。
ブリッジや談話室等からは遠い為、辺りはシンと静まり返っている。
一度は仮眠室に行ったアスランだったが…眠れなかった‥。
無論、疲れていない訳では無い。寧ろその逆だ。…けれど、横になり瞼を閉じると‥どうしても思い出してしまうのだ‥。
自分が今までに、戦闘という名で奪ってきた多くのものを…命を………。
…‥窓から見える宇宙には、戦いの余韻を残すように、戦艦や戦闘機の残骸が漂っていた。
…だが、今はもう、モビルスーツも飛んでいない…。それだけが、アスランの心を少し軽くした‥。

 

「アスラン?」
その声に振り向くと、そこにはカガリが居た。
「‥カガリ?」
「お前、何やってんだ、こんな所で?」
「カガリこそ、どうしたんだ?」
「私は食堂でお茶を貰って来た帰りだ」

確かにその手には、ボトルが握られていた。
そう言いながら近くまでやって来て、不思議そうにじっとアスランを覗き込む。

「お前も飲み物、貰いに来たのか?」
「‥まぁ、そんな所かな…」

と、窓の外に目を移すアスラン。つられて外を見ると、そこにはモビルスーツの残骸が漂っていて…。

「…‥これ、飲め!」
何を思ったのか、カガリは突然、ボトルを差し出した。
「え?」
戸惑うアスランに「いいから!」と半ば押し付けるように渡す。

「これはお前が飲む為に貰ったんじゃ‥」
「いいから、飲め!」
一度言い出したら聞かないカガリの性格をよく知っているアスランは、訳が判らないまま、取り敢えずボトルの中身を一口飲む。
それを見て「よし」という表情を浮かべるカガリ。
「‥それは安眠効果のあるお茶だ」
「え?」
「まあ、気休めみたいなものだけどな」
「!(カガリ、気付いてたのか…。!‥それを貰って来たって事は‥)まさか、お前も?」
「ああ、同じだ。疲れてるのにな」
と言い、苦笑いを浮かべる。
そして二人は、窓の外に目を向けた。


つい数時間前までの戦闘の証拠が、変わらずそこには漂っている。
只、戦闘中には絶え間無く響いていた爆発音は…今はもう聞こえない。
「…静かだな」
「ああ…」
答えたアスランをそっと見ると、その瞳は悲しげで…‥。カガリは思わず叫んでいた。
「お前、あんまり一人で抱え込むなよ!!」
唐突に飛んできた言葉に驚いたアスランだったが
「…ああ、お前もな」
と、微笑みとともに言葉を返す。
「わ、私より‥お前の方が…」


真っ赤になって俯くカガリを見て、アスランの顔からは笑みが溢れて…、
その瞳には温かさが満ちていた‥。


 

 

 


END

 

 

 

素敵な素敵な小説を頂きました・・!
随分前から頂戴したにも関わらず掲載が遅れて申し訳ないです。
カガリを見るアスランが優しい・・・っ甘い・・・っ!
アスランを心配するカガリの愛情も素敵です・・・!
本当にありがとうございました!
次はぜひキスに挑戦してくださいね?(笑)  望月

 

 


 

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